地銀・信金で働く新人行員のリアル
「他行より金利が低い」夏の定期預金キャンペーン
こんばんは!銀行で働くむきむきあざらしです! 今回は銀行員になると個人営業で必ず経験する「定期預金」について。地銀を目指す学生の方が、就職後のイメージをより鮮明にする一助になればと思います。
7月に入ると、各銀行や信金の店頭に「夏の定期預金キャンペーン」のポスターが並び始めます。学生のみなさんは定期預金なんて気にしたことはないかもしれませんが、金利のある時代を生きてきた年代の方々は、今でも定期預金が大好きです。
銀行にとっても、一度預けてもらえば一定期間資金を確保できる定期預金は、預金獲得競争の大切な手段。なぜかは分かりませんが、夏になるとほぼ同時に各金融機関でキャンペーンが始まります(私も銀行に入るまでは、定期預金になぜ需要があるのか分かっていませんでした)。金利が少し上乗せされる定期預金は、富裕層にとってはお小遣い程度でもお金を増やせるチャンスなのです。
一定の人気がある定期預金ですが、金利が低ければ簡単に他行へ資金が流れるきっかけにもなってしまいます。(´;ω;`)ウゥゥ
目の前でお金が出ていく音
窓口やお客様先で、こんな会話を交わすことが増える時期でもあります。
窓口でのやりとり
「定期預金、そろそろ更新のご案内なんですが……」
「あ、それなら隣の信金さんの方が金利高いから、そっちに移すよ」
ですよねー、って思います。わざわざ金利が低いところに預けるメリットはないもん。
もちろん営業なので、断られること自体は日常茶飯事。慣れています。なにがしんどいかと言うと、こちらに「お客様を引き留めるだけの武器」がほとんどないことです。
金利という、定期預金においてはほぼ唯一とも言える比較可能なスペックで、明確に他行に見劣りしている。お客様は決して感情的に離れていくわけではなく、極めて合理的な判断として、より条件の良い金融機関へ資金を移すだけなのです。
隣の銀行が特別高いわけではなく、うちの銀行が特別低いってことに気がついたときはびっくりしました。それから、うちの銀行で定期預金してる人はなんでなのか疑問でしかたないです。
さらに厄介なのが、比較対象が「他行の定期預金」だけでは済まなくなってきていること。最近は資産形成への意識が高いお客様ほど、個人向け国債の金利をきちんと調べていらっしゃいます。「銀行の定期より、国が発行してる国債の方が金利高いんでしょ?」と気づかれる方も多いです。
金利を高く設定している銀行さんや信金さんなら大丈夫でしょうが、国債より定期預金の方が金利が低い場合はどうしても負けてしまう。しかも国債は「国が発行している」という安心感まで併せ持っています。金利で見劣りしたうえに、安全性のイメージでも張り合いにくいのです。
定期預金という商品そのものの土俵が揺らいでいる感覚は、正直、他行との金利競争以上に根が深い問題だと感じています。窓口でどれだけ丁寧に説明しても、「でも国債買うので大丈夫です」の一言でトスアップできる可能性がなくなります。
これは例えるなら、登山グッズをなにも持たずに富士山に行くようなもの。装備をバリバリに整えている人を見ながら「なんで俺は登り切れないんだ!!」って言っているようなもんです。目標を達成するために必要なものを持ってないんですよね(笑)
一年目から感じる配属ガチャ
もう一つ、現場にいると痛感するのが「競っている場所によって、勝敗がほぼ決まってしまっている」という理不尽さです。
同じ銀行、同じ看板を背負っていても、支店が置かれたエリアによって状況はまるで違います。周辺に他行の店舗がほとんどない、いわゆる”金融過疎地”に近いエリアであれば、お客様には選択肢がないため、多少金利で見劣りしていても取引が大きく流出することはありません。地域で唯一の窓口として、ある種、必然的に選ばれる立場にあるからです。
一方、都市部に近く他行や信金がひしめき合うエリアでは話が違います。金利という分かりやすい比較軸で見劣りした瞬間、お客様は文字通り「歩いて数分」の他行窓口に流れていってしまう。同じ会社の中の話なのに、置かれた立地条件によって、営業努力とはほぼ無関係に成績の明暗が分かれてしまうのです。
厄介なのは、この差が個人の評価だけでなく、支店やエリア全体の成績、ひいては賞与にまで直結してしまうこと。「隣のエリアは今期も好調で賞与が上がったらしいのに、うちのエリアは他行に食われて数字が伸びず、賞与も据え置き、あるいは減額」という話を聞くたびに、正直やるせない気持ちになります。同じように汗をかいて働いているつもりでも、配属されたエリアの競争環境という、自分では選べない要因によって評価が左右されてしまう。これもまた、地方金融機関特有の構造的な理不尽さの一つだと感じています。
それでも、とにかく声をかけ続ければ興味を持ってくれるお客様が確実にいます。一年目でノルマのプレッシャーが薄いからこそ、腐らずに続ける根性とメンタルを鍛えていきたいと思っています。
地域に根差した金融機関として、金利以外の部分——相続や事業承継の相談、地元経済とのつながり、顔の見える安心感——で何とか価値を提供しようともがく。この矛盾を抱えながら仕事をするのが、地方金融機関の営業の日常なのだと思います。
金利上昇してるからこそ大変なこと
長らく続いた低金利・ゼロ金利政策の時代が終わりを迎えつつある今、預金獲得はとても大切になってきています。
ネットバンクや大手行が機動的に金利を引き上げる中、地域金融機関が同じスピード感で追随するのは、収益構造や体力の面で簡単ではありません。これは特定の銀行や個人の努力不足の話ではなく、業界全体が直面している構造的な課題だと感じます。
だとすれば、私たち現場が本当に磨くべきは、「金利で勝てない前提での戦い方」なのかもしれません。
現場で磨くべきこと
・金利以外の付加価値(相続・事業承継・資産運用など、生活に伴走する提案力)
・地域内の情報網や人脈といった、ネット銀行には作れない”顔の見える”強み
・顧客一人ひとりのライフプランに即した、短期的な金利勝負ではない中長期の関係構築
言葉にすると綺麗事に聞こえるかもしれません。正直、現場でボーナス商戦のノルマに追われている最中は、そんな悠長なことを考える余裕もないのが本音です。それでも、「丸腰で特攻させられている」という感覚を抱えたまま漫然と数字を追い続けるのではなく、なぜ自分たちが不利な条件で戦っているのか、その構造を理解した上で、自分たちにしかできない価値は何かを問い直すこと。それが、この理不尽な夏を乗り切るための、せめてもの支えになるのではないかと思っています。
今年の夏も、きっとどこかの窓口で、同じようなやり取りが交わされているはずです。同じ立場で戦っている全国の地銀・信金の同志たちに、少しでもエールが届けば幸いです。
また、学生のみなさんに銀行員ってこういう仕事ですよということが少しでも伝わっていれば嬉しい限りです!窓口で見えている以外の仕事を、これからも発信していければと思います。
では、寝不足なのであざらしは寝ます。