現役地銀行員コラム
地銀の個人営業はきつい?
入行1年目で分かった現場の泥臭さと企業研究・面接対策
地方銀行で若手が最初に経験する支店内の営業って、実際どんなかんじ? 金融業界の企業研究や面接対策を進める中で、「現場ってどうなの?」「就活サイトの情報は本当?」と気になっている就活生へ。
こんばんは!銀行で働くむきむきあざらしです!🦭 今回は、個人営業で経験することのある「定期預金金利アップキャンペーン」を例に、就活サイトだけではイメージしづらい現場の様子と、選考前に知っておきたい対策をお伝えします。
この記事で提供したい情報は3つ
- 地銀の総合職新入行員の一日の流れと仕事の様子
- 他行・ネット銀行・個人向け国債との競争環境
- 面接やOB訪問で使える逆質問と、志望動機を言語化するヒント
01預金の流出と金利負けの現実
7月や冬のボーナス時期に入ると、各銀行や信金の店頭に「定期預金キャンペーン」のポスターが並び始めます。学生のみなさんは気にしたことがないかもしれませんが、金利のある時代を生きてきた年代の方々は、元本保証の定期預金を好まれる方が非常に多いです。
最近は、2024年のマイナス金利解除以降、段階的な利上げが行われ、普通預金や定期預金の金利が引き上げられているため、キャンペーン対象のお客様には窓口やお電話でご案内をします。しかし、おすすめしても「他行さんやネット銀行の方が金利が高いから」と断られることは日常茶飯事です。
感謝品(日用品などのノベルティ)をご用意してご案内しても、金利差が0.1%〜0.3%ほど開いていると、合理的なお客様ほどネット銀行などを選ばれます。
📈 定期預金と比較される「個人向け国債」の登場
最近は資産形成への意識が高いお客様が「個人向け国債」の金利に注目されることが増えています。今までであれば定期預金に流れていた資金が国債に流れる、ということです。
「国債のチラシを見て金利が高かったから、満期になった定期を解約したい」というお電話が増え、銀行の預金が減る要因になっています。金利の数字で負け、さらに「国が発行している」という安全性のイメージでも、なかなか勝てません。
財務省が発行する『個人向け国債(変動10年など)』は、市場金利の上昇に伴って適用利率が上がっているうえ、国が元本や利子の支払いを保証しており、中途換金時でも元本割れしない仕組み(※発行から1年経過後)になっています。最低金利(年0.05%)も保証されているため、安全性を重視するシニア層にとっても非常に魅力的な選択肢です。
同期がこぼした面白い例え
「竹槍だけ持たされて、戦車(国債やネット銀行、金利の高い他行)に突撃しろって言われてるようなもんよな。」
だからこそ、金利以外の価値(対面での手続きサポートや、相続・資産全体の相談など)をどう提供するかが、地銀行員に問われています。
それでも「いつも良くしてくれるから」と預けてくださるお客様には、本当に感謝しかありません!ネットバンキングの操作に不安がある高齢のお客様には、まだまだ対面で定期預金をお申し込みいただくことが多いです。また、地方ではATMがある銀行が限られるため、県内でATMや店舗網が多い地銀で毎年定期預金を組んでくださるお客様も多くいらっしゃいます。
02配属エリア(都市部・地方)による営業スタイルの違い
もう一つ、現場にいると痛感するのが「競合がいるエリアかどうかで、営業のしやすさが変わる」という点です。同じ銀行の看板を背負っていても、支店が置かれたエリアによって状況は天と地ほど違います。
| 比較項目 | 激戦区(都市部) | 郡部・住宅地エリア(地方) |
|---|---|---|
| 競合の数・環境 | メガバンクや他県の地銀を含めて競合が多く、当行をメインバンクにしていない方も多い。 | 周辺に他の金融機関が少ないため、地域インフラとして選ばれやすい。 |
| 主な営業スタイル | 新規開拓や他行からの預金預け替えがメインになるため、獲得ハードルは高め。 | 親の代から地域密着の信頼関係がすでにできており、新規開拓の心労が少ないケースもある。 |
| 求められるスキル | 断られても飛び込み営業やアプローチを粘り強く続けられる行動力・提案力。 | 既存のお客様からの信頼を損なわない人間力、正確な商品知識、丁寧なビジネスマナー。 |
| 若手行員のメリット | 厳しい環境で、若いうちから実践的な営業経験を積むことができる。 | 入行後すぐに出納業務(お金の管理)や後方事務から始まる場合、多様な業務を幅広くこなせる。 |
大変なのは、この差が個人の評価だけでなく、支店全体の成績、ひいては私たちの「賞与(ボーナス)」にまで直結してしまうことです。
私の働く銀行は現在、地区の特徴や顧客基盤に合わせて目標(ノルマ)が調整されていますが、それでも配属先のエリア特性によって日々のプレッシャーが変わるのは事実です。
💡 選考前にチェックしたいこと
志望する地方銀行が「どのような店舗網を持っているか(県庁所在地への集中型か、県内全域のインフラ型か)」を、ディスクロージャー誌や店舗一覧で確認しておくと、入行後の働き方のギャップを防げます。どの支店からどの支店までが配属の可能性があるのか、選考前にしっかり確認しておきましょう。
03金利で勝てない1年目の泥臭い戦い方
長らく続いたゼロ金利政策が終わり、各行が預金金利を引き上げる中、資金調達構造の違いや地域ごとの経営方針により、どうしても金利競争に対応しにくい事情もあります。商品のスペック(金利)で勝てないとなると、現場では泥臭く「接点の数」をこなすことが求められます。
生命保険などの営業では「まずは友達や家族に頼む」という話も聞きますが、銀行の支店業務では、主なターゲットが「支店管轄内在住&既存口座あり」のお客様に限られるため、身内に頼る方法は現実的ではありません。
結局、窓口やATMコーナーに来店されたお客様にお声がけしてチラシをお渡ししたり、満期を迎えるお客様リストをもとに片っ端からお電話(テレマ)をかけたりする、地道なアプローチが中心になります。
私はまだ1年目で大きな数字は背負っていないため、まずは窓口によく来られるお客様に顔と名前を覚えていただき、「いつも元気に頑張っている新人さん」として信頼関係を築くことから始めています。具体的には、次の2つを自分の目安にしています。
10人
窓口でのお声がけ
(1日最低)
5件
電話案内(テレマ)
(1日最低)
入行したばかりの頃は、「キャンペーンが始まるので良かったらご検討ください」としか言えず、何と比べてどう良いのかが伝わらないまま断られることが多くて落ち込みました。
そこでOJTの先輩に相談したところ、「ただキャンペーンを案内するだけでなく、去年の金利や普段の定期預金と何%違うのかを先にお伝えして、定期預金にしたら具体的にいくらお得になるのかを、お客様の頭の中でイメージしやすくしてみて」とアドバイスをいただきました。
それからは、「通常より〇%金利が高くなるキャンペーンが始まりまして…」と、お客様にとってのメリット(結論)から先に話すように工夫したところ、足を止めて話を聞いていただける確率がグンと上がりました!
04若手行員のリアルな1日のスケジュール
「泥臭いアプローチって、具体的に1日の中でどう動いているの?」と疑問に思う就活生も多いはずです。配属される部署(窓口・後方事務・渉外など)によっても変わりますが、新入行員でまだ営業活動がメイン業務ではない私の、リアルな時間の流れをご紹介します。
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08:20 – 09:00
出社・開店準備・朝礼
開店準備は9:00までに確実に終わらせなければならないため、メンタル的には1日で一番忙しく感じます。両替機がある支店では、この時間に両替に必要な現金を装填(追加)します。また、その日窓口に持ち出す現金の準備や、本部に送る鑑定券、使えない紙幣(汚損紙幣や旧紙幣など)の発送準備も行います。
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09:00 – 11:30
窓口対応・ロビーでのお声がけ
9時の開店と同時にお客様が来店されます。入出金や振込手続きの合間に「現在、定期預金のキャンペーンを実施しておりまして…」とチラシをお渡しします。窓口に立つ日は、手続きが終わって領収書や通帳をお返しする際に一緒にお渡しし、ロビー案内業務の日はお待ちいただいている間にお声がけしています。
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11:30 – 12:30
昼休憩
私の配属先は昼休みに窓口が閉まるタイプの店舗(昼休業導入店)のため、この時間は基本的に昼休憩です。午前中のお客様対応が長引いた場合は、時間をずらしてお昼休憩を取ります。
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12:30 – 15:00
午後の窓口再開・後方事務・テレマ
午後の窓口対応や、後方での事務処理を進めます。お客様が途切れたタイミングがあれば、定期預金の満期を迎えるお客様へお電話(テレマ)をかけることもありますが、基本的には日々の事務作業などであっという間に15時を迎えます。
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15:00 – 16:00
閉店後の締め作業(ご名)・書類整理
15時にシャッターが閉まった後は、現金の締め作業に入ります。いわゆる「ご名(ごめい)」=帳簿上の計算と実際の現金残高が1円の狂いもなく一致した状態を15:30までに出す必要があるため、毎日時間に追われます。また、銀行は紙文化がまだまだ根強いため、伝票や書類をファイルにまとめたり、不要なものを規定に沿って処分したりするだけでも、まとまった時間がかかります。
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16:00 – 17:30
営業記録の入力・翌日の準備・退行
締め作業が終わった後、余力があれば追加で電話営業をすることもありますが、その日に窓口や電話で行ったお声がけの内容・お客様の反応をシステムに記録(交渉履歴の入力)するだけでも時間がかかります。明日の準備を整えて退行します。
📚 退行後は「資格勉強」が待っている
1年目の行員にとって、日中の業務と同じくらいハードなのが「帰宅後や休日の資格勉強」です。
銀行に入行すると、簿記や信託実務、生命保険・損害保険の販売資格など、業務に必要な試験を毎月のように受験することになります。定時付近で帰れた日でも、帰宅後にテキストを開く生活が続くため、「働きながら勉強する体力と習慣」は、今のうちから覚悟しておくと入行後のギャップがありません。
05【就活生へ】「ノルマ・残業なし」の真相と逆質問リスト
これから地銀の選考を受ける就活生の皆さんに、強くお伝えしたいことがあります。
会社説明会などで「うちにはノルマはありません」と言われても、実際の目標管理や評価制度については、ご自身でしっかり確認してみてください。私自身も入行してみたら、実質的なノルマ(目標という名の、達成を強く求められる数字)がありました。
また、就活生向けの座談会で「残業はほぼありません」と聞くこともあるでしょう。しかし、残業時間や業務量は、配属される支店・部署によって大きく異なります。
🔍 座談会やOB訪問で「リアルな環境」を見抜く逆質問5選
「ノルマはありますか?」「残業は多いですか?」とストレートに聞くと、人事や社員の方も建前の回答しかできません。実態を具体的に引き出すには、角度を変えて質問するのがおすすめです。
- 1年目の行員は、具体的にどのような指標(件数や金額、プロセスなど)で目標設定をされますか?
- 都市部の大型店と地域密着型の支店で、若手に求められる役割や雰囲気にどんな違いがありますか?
- 15時の閉店後から退行までの間は、主にどのような業務に一番時間を割いていますか?
- 入行1年目で取得が必須となる資格の数と、皆さんがどのように勉強時間を捻出されているか教えてください。
- 他行やネット銀行と金利面で比較された際、〇〇銀行ならではの強みとして、お客様に何を一番お伝えしていますか?
こうした具体的な質問を投げかけることで、社員の方の本音が聞き出せるだけでなく、「現場の業務を解像度高くイメージできている学生だ」と好印象を与えることができます。
06まとめ:現場の泥臭さを知ったうえで選考に臨もう
💡 就活・面接での実践的アドバイス
面接で「金利競争が厳しい中、地銀の行員としてどうお客様に選ばれる存在になりたいか」「泥臭いアプローチや資格勉強をどう前向きに乗り切るか」を自分の言葉で語れると、現場の仕事を理解したうえで志望していることを、説得力をもって伝えやすくなります。
銀行の仕事は、スーツを着てお客様に提案するかっこいい部分だけではなく、チラシ配りや電話案内、毎日の厳格な現金管理といった、地道な積み重ねの上に成り立っています。
これから地銀を受ける皆さんは、こうした「就活イベントでは見えないリアルな環境」を理解したうえで、それでも地域社会に貢献したい、金融の最前線で揉まれてみたいと思えるか。ぜひ企業研究の中で、自問自答してみてください!
© むきむきあざらし


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